マインドフルネスを試してみたくなる8つの効果
「今、この瞬間」に集中し、過去に思いを巡らしたり、未来のことを思い悩んだりしない状態。そして常にオープンで好奇心を持ち、何事も決めつけない。これがマインドフルネスだ。
最近では、自分がどのくらいマインドフルネスかということを「マインドフルネス・アテンション・アウェアネス・スケール(MAAS)」と呼ばれる15の質問に答えることで知ることができる。
それぞれの質問に当てはまるかどうかを6段階で答える。「常に当てはまる」「かなり当てはまる」「ときによっては当てはまる」「ときによっては当てはまらない」「ほとんど当てはまらない」「全く当てはまらない」というように。
「常に当てはまる」という項目が多ければマインドフルネス度が高いということになる。そしてマインドフルネス度の高い人の特徴は以下の8つだ。
1.血糖値が低い
およそ400人のボランティアの協力のもとブラウン大学が実施したテストでは、MAASの値が高かった人は同時に血糖値が低い傾向があることが分かった。
マインドフルネスな人は、生活の上で重要なことでも変えていくことができる傾向もあるそうだ。
ペンシルバニア大学の研究では、マインドフルネスな人は健康上のアドバイスに恥じ入ることは少なく、意欲的に改善に取り組む傾向があるという。
2.食習慣が良い
肥満関連の雑誌の研究によると、マインドフルネスによって食べ物をよく考えて選んだり、今が空腹なのかお腹が一杯なのかを注意してみていくと、減量プログラムだけを実践しているときよりも血糖値を改善でき心臓の健康状態をより良く保てるとのことだ。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校で、肥満体形の成人194人をマインドフルネスを実施するグループと実施しないグループに分け、5ヶ月半の期間、同じ食事と同じ運動メニューを提供した実験を行った。マインドフルネスのグループには食事中や運動中にも自分自身の考えや感情、身体に感じる刺激などを注意深く観察する練習をしてもらったところ、1年半後には体重が約4.3%減った。この数値はマインドフルネスを実施しないグループより約1.6kg多かったという。
ブラウン大学のまた別の研究結果によると瞑想などをしなくてもマインドフルネスな行動パターンの人は肥満になりにくく腹部の脂肪も少ないとのことだ。
年齢や喫煙の経験、社会経済的な状態などを考慮に入れても、これらの結果は意味深い。
3.ストレスや不安が少ない
米国立衛生研究所の承認のもと、ジョージタウン大学メディカルセンターが実施した臨床試験で、マインドフルネス瞑想は不安症状に有効だということが立証された。不安障害のある患者にマインドフルネス瞑想コースを受けてもらったところ、大幅にストレスホルモンの分泌とストレスの多い状況に対する炎症反応が減少したことを発見した(瞑想のないコースを受けた患者の方はこのような結果は出なかった)。トラウマとなっている過去の出来事や将来への不安で頭を悩ませるより、現在のことに集中した方がストレス耐性の向上に効果があると研究者は確信している。
カーネギーメロン大学の新しい研究によってもこの考えは裏付けられている。学術誌「Biological Psychiatry」で発表したところによると、炎症系のバイオマーカーでありストレス時には急激に活性化することがあるインターロイキン6(IL-6)の分泌が、マインドフルネス瞑想トレーニングにより減少したということだ。脳の断層写真を見ても、基本的に注意や認知システムに重要な関与を示す部位での神経接続のパターンがマインドフルネスによって変わることも突き止めた。
4.仕事によく集中できる
グーグルやエトナなどの進歩的な会社、更には米軍の海兵隊などが職場環境の向上のためにマインドフルネストレーニングを取り入れていることは驚くに値しない。マインドフルネスは集中力やストレスマネジメント能力、従業員同士の協力体制を向上させるからだ。英国議会もこの波に乗り、最近になって「Mindful Nation UK」と呼ばれるマインドフルネスの新構想を立ち上げ、国民の健康と生産性改善のためマインドフルネスを活用することを決めた。
研究者により4,000にも及ぶ論文からガイドが作成されJournal of Management社から出版されている。学問分野をまたいだ数々の発見によって、マインドフルネスは「今この瞬間」への注意を安定的に維持させることができ、トレーニングを修了した人は視覚的・聴覚的な作業に長く意識を集中していられるという結論が導き出された。
5.心臓が健康である
国際行動医学会の機関誌「International Journal of Behavioral Medicne」が400人ほどの参加者の協力を得て実施した研究で、毎日マインドフルネスを実践した場合、心臓血管の健康状態との間に重要なつながりがあることが分かった。研究者は、「今この瞬間」の感情に注意を向けられる人は、肥満や喫煙、また高血圧などの、心臓血管における危険因子につながる欲求もうまく対処できていると確信している。
この研究で、382人の参加者がMAASテストを受けたが、スコアが高かった参加者を、BMI値、空腹時血糖値、身体活動レベル、禁煙率という見地から心臓血管が健全かどうかを見てみると、健全な比率がスコアが低かった参加者に比べて83%高かったという。ストレス性の禁断症状が出たら瞑想をしてみることだ。
6.記憶力が良い
カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者によると、たった2週間のマインドフルネストレーニングでも読解力やワーキングメモリ、また集中力の向上が可能だという。
50人ほどの大学生を2つのグループに分け、1つはマインドフルネス、そしてもう1つは栄養学のコースを受講してもらった。彼らにはコースが始まる1週間前とコースが終わった1週間後に、GRE(修士号、博士号取得のためのテスト)から言語能力、ワーキングメモリの容量(WMC)そして注意散漫度を測るテストを受けてもらったところ、栄養学コースの学生よりもマインドフルネスの学生のほうが言語能力とワーキングメモリの容量に大幅な向上が見られ、注意散漫度には減少傾向が見られた。
7.痛みに寛容である
78人の健康なボランティアの人たちに行った二重盲険試験(薬や治療法の効果を見るための試験で、試験者にも被験者にもどのような処置が施されるのかを知らせずに行う試験)において、ウェイク・フォレスト・バプティスト・メディカルセンターの研究者たちが、瞑想の後には20%以上痛みが和らぐことを発表した。1つのグループにはナロキソン(ケシから採取されるアルカロイド系の化合物の鎮痛作用をブロックする作用がある)を注射していたにも関わらずである。瞑想をしなかったグループは試験中に痛みのレベルが上がったという。
この試験により以下の2つの事柄が示唆される。瞑想には独特の痛みを和らげる効果があること、またアヘン化合物への耐性がある人たちには、痛みの軽減を図る中毒性のない方法として瞑想が有効であるということだ。
8.安眠できている
「JAMA Internal Medicine」誌の記事によると、最近の臨床試験で、マインドフルネス瞑想は睡眠障害のあるシニア世代の睡眠の質を改善することが明らかになった。南カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究者たちが49名のシニアを募り、半数にはマインドフルネスを実践してもらい、残りの半数には睡眠衛生教育(睡眠習慣の改善と就寝までのルーティンを確立することを目的としたプログラム)を受けてもらった。ピッツバーグ・スリープ・クウォリティ・インデックス(PSQI)(睡眠障害のある人に広く実施されている、質問形式のテスト)で測定したところ、マインドフルネスを実践したグループの方が睡眠障害が下がっていたこと、不眠やうつ、そして疲労といった因子が改善されていたことが判明した。
これらの結果には心惹かれるものがあるが、この分野はこれからまだまだ数多くの研究が待たれるところだ。それまでは、自分自身で瞑想をしてみてはどうだろう?きわめて有用な研究結果となるかもしれない。
詳しくは、「マインドフルネスを試す8つの理由」参照